ブリキの馬

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    ブリキの馬/ジャニス・スタインバーグ著/青木千鶴訳/早川書房刊


     若者に手伝ってもらいながら 老人ホームに生活の場を移そうとして自宅の整理をしている老婦人が 母の遺品の入った箱を持ってくる・・・という場面から始まる。

     ヨーロッパの小国からアメリカに移民として渡ったユダヤ人たちの物語だが、これまでぼくはそういう物語を読んだことがない。といっても、このひとたちは家族としてアメリカに行ったのではない。ひとりずつ無一物で大西洋を渡り、ロサンジェルスのユダヤ人社会の中で生きたひとたちが出会って家族をつくっていった。

     主人公には双子の姉があったが、若いときに失踪したまま いまだに杳として行方が知れず、理由もわからない。国を持たないゆえに固い結束を持ち続けてきたユダヤ人、分かちがたい絆をもつ双子の片われが失われたという 大きく深い空白を、主人公は究明しようと心を決める。

     ロサンジェルスで活動してきた女性弁護士が、老人ホームに移り住むことを考えていたとき、女性の権利のために戦ってきたからだろう、蔵書や資料を図書館に寄贈してくれないかという大学からの申し出を受けると、大学は図書館学科の学生をよこしてくれた。彼(ジョシュという名なのだ)を助手として 荷物を整理しているうちに、ジョシュが見つけた箱には 母の残したさまざまなメモや書類や写真が詰まっていた。それが、この物語を起動させる。

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