小説「舟を編む」
昨年の10月にネットから図書館の貸出予約をしようとすると、すでに300人以上が待っているので、とりあえず本を予約しておいて先に映画を見た。
その後、図書館が蔵書を5冊に増やしてくれたおかげで行列の進行がはやくなったものの、やっと先週に順番が来た。映画「舟を編む」が「日本アカデミー賞」の一等賞をたくさんもらった翌日だ。
すでに映画を見ているのに、小説を読んでもすこぶる面白い。映画を先に見たから俳優の顔が浮かんでくるのだが、映画で小林薫と加藤剛が演じる二人の人物が、小説では両方とも橋爪功になってしまう・・・二人が会話することも多いのに、なぜなんだろう。
小説をもとにしてつくられた映画は、もともと軸となる物語を背景であるかのようにしてラブストーリーに変えられてしまうことが多い。アメリカ映画ならベッドシーンを入れるのがサービスだと思いこんでいる。
ところが、この小説では恋物語の比重が映画よりも大きい。逆に言えば、映画では恋物語の描写をシンプルにしている。「CLASSY」に連載されていたのだときいて、雑誌の読者に「辞典小説」を読ませるには、恋で味付けしなければならなかったのだろうと合点がいく。にもかかわらず、けっして辞典小説であることから逸脱していない。
いや、これは言葉をテーマにした「ことば小説」なのだと考えれば、ことばによって組み立てられてゆく辞典づくりと、ことばの「意味するもの」と「意味されるもの」が微妙にすれ違ったりする恋を、ひとつのカテゴリーにくくることができるではないか
- 2014.03.17 Monday
- ことば
- 18:54
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- by 玉井一匡