アカショウビンを帰す

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      もう3週間前の水曜日の朝のことだ。長野県栄村にある北野天満温泉の玄関前で立ち話をしていると、手網に重そうなものをいれて親子四人連れが車を降りて来た。
     
     近くの道路を車で走っていたら、道ばたに飛べずにいたので網に入れて連れてきたのだが、これは何という鳥だろう、どうしたらいいだろうという。
     カワセミの仲間のアカショウビンであることは、ぼくにも分かった。なにしろ初めて実物を目にしたうえに 2,30cmの距離にいて、くちばしの鮮やかな赤と 腰の気まぐれな青が つややかな褐色に浮かぶコントラストに、ぼくは胸をドキドキさせていた。
     
     くちばしの先に指を近づけると食いつこうとするし、目には精気がある。そのくらいの元気はあるのだが、さりとて羽を動かして飛ぼうともしないし、声も出さない。パニックにおちいっている様子もない。
     iPhoneでWikipediaのアカショウビンのページを探して見せてあげると、何者であったのかが分かったからだろう4人はひとまず得心して、今晩もここに泊まりますが、鳥をよろしくといって出かけていった。そのとき、アカショウビンは、手網から段ボールに移してやった。

    植物連鎖

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       日曜の朝の10時過ぎ、通りがかりの家の玄関先におかれた鉢、人の背丈ほどにすっくとのばした茎のさきに 蓮が一輪の花をつけている。ここの主とおぼしき浴衣がけの人が いとおしげにそれを見ていた。
        前夜に通りがかったときのつぼみは、 赤みがやや強すぎるほどだったのに、開くと その赤は花びらの先にすこしずつ分かち合ったようで、ほんのりと紅をのこした すがすがしい白い花に姿を変えている。

      「金魚もメダカもいませんが、ボウフラは出ませんか?」

      「この鉢は鉄なのでボウフラがわかないようです。ところが、ヤゴは棲めるらしくて、2匹がトンボになって飛んでいきました」とおっしゃる。

      あとになって話に加わった隣人によれば、黒地に黄色の横縞の大きなやつだったからオニヤンマだろうという。

      「ボウフラもいないのに、ヤゴは何を食べるんでしょう?」

      「ミジンコだと思うんです。金魚のエサに乾燥ミジンコが入っていて、それを水に入れると生き返るんですね。ミジンコというのは苔でも食べているのかと思っていたら、じつは肉食もする獰猛なやつで、イトミミズなどをいれると群がって食っちゃうんですよ」

       昼過ぎになると花を閉じますが、 明日の朝にはまた開きますから 開くところを見たかったら 5時か6時くらいにいらっしゃいとおっしゃるので、明日の朝 またうかがうかもしれないと言って駅にむかった。その夜には、ふたたび固く赤い蕾にもどっていた。


      半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義

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         半藤一利と宮崎駿の腰抜け愛国談義/半藤一利・宮崎駿/文春文庫
         
         今年も8月15日は朝から愛国者諸君がけたたましい音楽を流しながら街宣車で走ってゆく。飯田橋界隈は靖国神社が近いから、このあたりを周回しているのだ。

         買ったばかりのこの本を 娘がテーブルの上に置いたまま福島に行ったようで、手にとってみると、先日 NHKで放映されたのと同じ 半藤一利*宮崎駿による対談である。
        テレビ もすこぶる面白かったけれど 1時間番組だったのに対して、こちらは7時間あまりの対談のうち、些事を落として文字に起こしたというのだから、もっと面白いはずだ。8月10日第一刷という、出来たての本だ。

         
         言い方が少し違うところがあるので、それぞれ別の対談なのかもしれないとも思ったのだが、読んでいると、とても繰り返すことなどできそうにないことがわかる。 編集の違いなんだろう。

        風立ちぬ

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          Caproni Ca.60 
           アカデミー賞の表彰式にさえ出席しなかった宮崎駿が、この映画の公開を前に改憲反対の意見を明らかにして、韓国のマスメディアの記者会見にも応じた。
           それに反発する連中も少なくないだろうから、参議院選挙の投票日を前にした初日の列に加わることで ささやかに応援するつもりだったのにぼくは行きそこなった。娘がプレゼントしてくれた前売り券をもって2週間後の日曜日に最終の21:40に行くと、それでも前から2つの列しかあいていなかった。

           飛行機の物語だから下から見上げるシーンが多いし、高いところにいる菜穂子を堀越二郎が見上げることが多かったから、二列目の席からスクリーンを見上げるのが、むしろリアリティを増した。
           戦争に反対するのに飛行機が大好きという、自分自身の矛盾に向き合うべきだと、鈴木敏夫がこの映画の制作を宮崎に勧めたそうだけれど、戦車が大好きだが平和主義であるという もっと矛盾の大きいひとを、ぼくは長い間身近に見てきたから、宮崎さんの思いはわかるつもりだ。矛盾するところのない人間なんて、プロパガンダ映画に登場する若者のようで、ちっとも魅力がないもの。

          キャパの時代・ぼくたちの時代

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             沢木耕太郎の「キャパの十字架」のあと、ぼくはずいぶん長いあいだエントリーしないまま、やがてふた月になる。
             言いたいことがなくなったからではなくて、言わなければならないことや 知りたいことが次から次へと出てきて、それらがたがいにつながっているうえに、いま われわれの生きる時代とも深くつながっているから、ときに腹立たしくときに落ち着かなくなるのだ。

             「キャパの十字架」を読み終わったあと、どうも釈然としないところがあった。それは、このノンフィクションと並行して同じ題材のNHKのドキュメンタリー番組に沢木がたずさわっていたことと関わりあるにちがいないが、ぼくはそれをまだ見ていないのだとブログに書いた。
             すると、すぐに五十嵐進さんから、DVDにダビングして送るというメールをいただいて数日後には、NHK スペシャル「沢木耕太郎推理ドキュメント運命の一枚”戦場”写真最大の謎に挑む」日曜美術館「ふたりのキャパ」が届いた。

             このNHKスペシャルは、沢木自身が案内役をつとめ、ナレーションの文章も沢木の書いたものが使われるくらい、彼自身が深く関わって「十字架」と同じ道筋でおなじ結論に至るのだ。しかし、たった一枚の写真という題材を検証するとあっては、映像とコンピューターがやすやすとやってのけることに、文章はとてもかなわない。
             DVDを見たあとに、沢木自身を動かしたのは何だったのか、それ以上にキャパとその時代について知りたくなったぼくは「ちょっとピンぼけ」もまだ読んでいないのだが、沢木の翻訳した二巻の伝記「キャパ その青春」「キャパ その死」(リチャード・ウィーラー著)を手に入れた。

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