オフグリッド太陽光発電のワークショップ:ブラックボックスの効用

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     「今度の土曜日に、藤野電力というところが主催する オフグリッドの太陽光発電のワークショップに行くんだが、きみも行かないか」と秋山さんに訊ねられた。

     ぼくはすぐに好奇心がふくらんで 行きたいと即答したが、恥ずかしながら「オフグリッド」とは初めて聞くことばだった。

     

     とはいえ、太陽光で発電した電氣を電力会社に売らずに、そのまま自分で使うのだろうくらいの想像はできる。組織に拘束されず 独立のシステムをつくれるという爽快感もある。

     オフグリッド太陽光発電とは何か、どう組み立てるのかを知るには、よくできたワークショップだったと思う。

     

     中央本線高尾駅から各駅に乗りかえて2つ目の藤野駅で降りる。道を4〜5分下ると視界が開けた。快晴の相模湖のほとり、橋のたもと、雑然とした駐車場の奥にある倉庫にすぎないようだが、藤野電力の背後には相模川ー相模湖が広がっている・・・巨大な壁をつくって水を貯め、それを落とした勢いで発電するのを尻目に、薄いパネルで電氣ができるのだ。

     

     ワークショップは参加者を5組までとしているようで、この日の5組の内訳は、少年と両親の3人家族・女性2人組・単独女性2人・そしてわれらオヤジ組が2人・・・いずれも発電キット購入を申込んだ人たちである。ぼくは、秋山さんの購入に便乗したというわけだ。

     

     偶然なのかもしれないが、女子が多い。プラバシーに対する遠慮もあって 終了後に参加者の動機や背後関係について訊ねるという探偵術の基本を忘れたことが悔やまれる・・・理系女子なのか 電氣をどう使う予定かetc.  訊ねたいことはたくさんあったのに。

     

     我々が着いたときには、ケヤキの丸太をぶ厚く長く切ったテーブルの上と そのまわりに、すでに太陽光発電キットと工具(電工ベンチとテスター)が用意されていた。

     


     キットは4つのブラックボックスで構成される。それらを ケーブルでつなぐだけで発電システムが完成する。

     

    ‖斥杆発電パネル・1枚(ケーブルをつなげて日に当てれば、すぐに12V100Wの電氣が取り出せる SANYO製) 

    ▲丱奪謄蝓次 1個(パネルがつくる電氣を蓄える) 

    インバーター・1台(バッテリーから取り出す直流を交流に換える)

    ぅ灰鵐肇蹇璽蕁Γ餌罅癖儔修垢詁射と容量に限りのあるバッテリーの状態を把握して取り入れる電氣の量を調整する)

     

    Click to PopuP

     

     ワークショップでは、電氣と太陽光発電について説明を受けたあと 作業にかかる。4つのブラックブックスを結ぶケーブル4本の両端をビス留めする端子を取りつけるのだ。

    ・ケーブル端の被覆ビニールを電工ペンチで切って剥がし

    ・そこに端子をつけて電工ペンチでつぶし固定する

    ・そのケーブルでボックスたちを結ぶ。

     

     ごく単純な作業をしただけなのに、その間にあれこれ想像力をはたらかせるからなのだろう、ワークショップを終える頃に ぼくは太陽光発電の仕組みを感覚的に理解している。システムをブラックボックスとして整理することで明快になるからだろう。

     

     ブラックBOXのありかたには2つの種類がある。ひとつは ものごとの仕組みを明快にするが、もうひとつは逆に 実情を隠して理解させまいとするものだ。

     この太陽光発電は、発電・貯える・調整する・交流に変換 という4つの機能をそのまま機械におきかえられている。

     

     ところが原発などは、発電所全体をひとつのブラックボックスにしてきた。ボックスの中の、原子炉・発電機・制御室があれば発電できる。しかし、これらのほかに 膨大な死者をもたらす 危険きわまりない燃料と廃棄物が、あの巨大な施設に蓄えてられいる。原子炉の中では常に危険な核分裂が行われている。それらを隠し 炭酸ガスの発生が少ないクリーンエネルギーを装うために、大きなブラックボックスにしてしたのだ。 

     

     ところで、オフグリッドの「グリッド」とは何を指すのか 気になった。Googleで「OFF GRID」と検索してみると「off-the-grid」という項目がWikipediaにある。その説明によれば、gridとは電氣にかぎらず、インフラストラクチャーのことを言うらしい。

     たしかに、電氣も水道もガスも、配管網は道路の上や地中に埋設される。だから、縦横に格子状につくられているまちを思い浮かべれば、インフラストラクチャーのことををグリッド(格子)というのは自然なことだ。

     

     核廃棄物は処理の方法が確立していない。今後も確立することはないだろうから 「グリッド」を構築できないまま 大部分をそれぞれの原発に溜め続けている。福島では冷却水も増え続ける。皮肉なことにこれも「オフグリッド」と言っていいだろう。それどころかグリッドそのものがない。「闇のオフグリッド」あるいは「グリッドレス」と言うべきだろう。

     

     福島原発の壊滅以後、安倍政権による強引な再稼働が行われるまで、原発などなくても日本は困ることはなかった。オフグリッド発電が普及すれば、原発再開のブレーキになるだけでなく、電氣の消費を減らそうという意識も深まるだろう。

     

     女性たちが電気的な装置に興味をもつことは少ないが、多くの女子が キットを購入しこのワークショップに参加して、装置を自分の手で組み立て、自分の住まいに取りつけようとしている。

     おそらく、 その動機は、電氣や機械に対する興味よりも、原発に対して自分自身の手で何かをしたいという思いが後押ししているのではないか。MeTooといいアメリカの高校生の銃規制運動といい女子が先頭に立つことによって 運動が力を持った。オフグリッド発電に女性が惹かれれば、面白いことになるかもしれない。

     

     電気事業連合会は、自身のウェブサイトにある「発電のしくみ」という項目で、水力・火力・新エネルギーとならべて原発のしくみを説明している。

    ここで「原子力発電」をクリックすれば原発についての説明が開く。

     

     そこにある「火力発電と原子力発電の違い」という図解が おもしろい。火力発電所は煙突から煙を吐き出しているのに、原発の核廃棄物のゆくえは描かれていない。

     

    冷却水の入ってくる水は「冷却水(海水)」と書かれているが、出て行く水は「放水路へ」と書かれているだけで その先のことは書いていない・・・それは海に捨てられるし、発生する熱の約70%が海に捨てられると言われているはずで・・・原発はCO2の排出こそ少ないが直接に海水を温暖化しているのだ。


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