ルー

0

     先週の金曜日、ぼくの叔母の家で うちの娘たちが枕をならべて寝入っていた。

     真夜中、枕元に寝ていたルーが 起きるなり部屋を飛び出し、なにやら緊迫した気配と物音に目を覚ました長女が、慌てて廊下にいってみると ルーは前足でネズミをおさえている。

     ネズミをくわえて食べそうになったので、あわてて首輪をとって引き離した・・・翌朝ぼくは、ことの次第をLINEで知った。

     

     ルーは、ひと月あまり前に長女がひきとった犬、獣医さんたちによれば2〜4才くらいらしい。

     やってきて二・三日で、あきれるほど彼女になついた。留守番させて近くに買いものに行き 帰ってくると、クルクルクルと回り あらん限りの力で尻尾を振り、手といわず顔と言わず ペロペロと舐めて、まるで何年も離れていたのが生還したような喜びようだ。

     

     長女に対する愛情は別格だが、すこぶる人なつっこいから 来るひと誰もが可愛がってくれる。ぼくがソファで寝ていると、足もとに置いた毛布の上で眠っているが、目を覚ましたと知るや横にやって来て左手を挙げ 腕をつつく。頭や喉をなでたり首をかかえたりしてやるとうれしそうにしているが、やめると また左の前足で催促する。数分ほど そうやっているうちに、こちらも目が覚めて、彼女も満足する。

     

     そういう女の子がネズミに遭遇するや、にわかに野生に戻ったように、俊敏で攻撃的な肉食動物になったものだから、娘たちは驚いた。ぼくはそれを聞いて 驚く以上に ますます気に入った。

    r 9月の末、LINEに載せた犬の写真を、クーと似ているねなどと 娘たちは 前に飼っていた犬の記憶を重ねて盛り上がっていた。

     ・・・つくば市の女の子が迷い犬を町で見かけて警察に届け、それが今は保護センターに送られている。引き取り手がいないと薬殺されるのだが私自身は犬を飼えないので、だれかひきとる人はいないだろうか・・・とTwitterに流したのだという。

     

     家族のLINEグループだったから 娘たちのやりとりを ぼくも見てはいたものの、何も発言しなかった。ただでさえ、あれこれやることがあるし、犬がいれば行動の自由が制限されることを思えば あまり積極的には なれず、さりとて やめたほうがいいと言う気にもなれなかったのだ。

     

     保護犬といえば、かつて友人が犬を散歩させているときに、ゴールデンリトリバーの迷い犬に遭遇した。巡りめぐって その犬はべつの友人がひきとることになったが、彼は、最後までホームレス犬の名残が消えなかった。散歩中に食えそうなものを見つけると口にくわえる。訳の分からないものを食べさせまいとそれを取り上げようとすると放そうとせず、やっと取り上げると飼い主に食いついた。そういう話も記憶に残っていた。

     

     長女が 指導センターに行って つくば市の迷い犬と会い 話を決めてくると、数日後にはるばる犬を届けてくれた。犬の譲渡には手順があって、里親の環境を見てから引き渡すことになっているので、会いに行って そのまま引き取ってくるわけにはゆかないのだ。なにしろ、引き取り手の中には 虐待や殺すことを目的にやって来るやつがいるというのだ。

     

     ルーは、しばらくは放浪していたはずだが、性格はおだやかだし排便のしつけもできているようで、ほとんど欠点がない。ただひとつ、いつも食欲があることくらいだ。ドッグフードを適量やっても、我々が何かを食べると飛んできて 足もとに座ってじーっと見つめている・・・それでも、決して吠えることはない。食べられるときには食べておくという行動様式が、放浪中に身についたのだろう。いじらしいのだが、かつて こどもたちが食べ物をやるおかげで、ひどいデブにしてしまったことがあるので ぼくたちもやらずに我慢する。

     

     これまでに何があったのだろうかと思うことがいくつかあって、謎を連れてきたようで興味深い。

     たとえば 吠えることがない、だが、夜中やサイレンを聞くと遠吠えを続ける。散歩で 近くの人混みのする道路に近づくと、くるりと方向転換する。人混み・鋭い音・子供の集団・他の犬などが苦手なのだ。食いしん坊ではある、しかし、餌をやるときに「待て」と言うと ずっと食べずにいる。

     ひそかに期待はしていたのだが、ネズミも捕まえてくれた。今にして思えば、その前に玄関にあった死体も彼女が捕まえたのだろう。ネズミの跋扈していた叔母の家から、いまでは天井裏の物音も部屋の隅のフンもなくなった。

     

    ■追記 ペットショップでは 子犬のほうが売れるから、店によっては 成長を遅らせるために餌を充分にやらないことがあるときいたことがある。売れ残った犬がどういうことになるかは、想像に難くない。

     茨城県動物指導センターをGoogleマップで探してみると、笠間市の郊外で 東のとなりにはゴルフ場があり、南にはペット霊園・慈苑というのが隣接している。ルーは、ほんとうに際どいところを救われたわけだ。


    コメント
     沖縄タイムスのウェブサイトに、那覇のペットショップが犬猫の生態販売をやめることにしたという記事が出ていた。今後は、散歩などのサービスを行うことにするという。
     この記事にも、ペットショップで売れ残った犬猫は殺処分されるとは書いていないが、これは 殺処分を減らすきっかけになるだろうというコメントは書かれている。
    https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/350643
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << March 2019 >>

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    recent trackback

    recommend

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM