ドラマ「民衆の敵」と その味方たち
さきの選挙では、自民党が2/3議席を占めた落胆と、進んで投票できる政党ができたよろこびが交錯したが、その翌日10月23日に「民衆の敵」という連続テレビドラマが始まった。
若松孝二の映画「キャタピラー」などを書いた脚本家の 意欲的なドラマらしいと娘が期待しているので録画予約しておいた。安倍政権に協賛しているフジテレビから放映されるということにも興味を惹かれた・・・NHKであれ読売であれ、上からの圧力に屈しない人がいるということなのか。
録画を見てみると、おもしろい。
このドラマと、それを活用して政治について知ろうと呼びかける女子学生たちを、先日の東京新聞夕刊が紹介していた。
彼女たちは「#民衆のミカタ」というTwitterのハッシュタグをつくり、その日の番組の内容について 地方議会の若い現役女性議員にインタビューする動画を番組放映の前後にYouTubeで流している。
内閣支持率が低いにも関わらず 与党が圧勝したのは、投票率が低いせいであることを考えれば、これは注目すべき活動だ。
小池百合子が、本音もあらわな暴言で、権力欲あふれるタカ派であることを明らかにしたが、それは、ドラマ「民衆の敵」を面白くした。「民衆の敵」とは言うまでもない、有権者のためを装っておのれ自身と周囲の人間が権益を手に入れ、行政を思うままにする政治家のことだ。このキャラクターには小池百合子と安倍晋三が重なって見える。
ドラマで活躍する主人公は、視聴者が感情移入しやすい人物像でなければならない。この主人公は、子供を保育園にあずけてパートの仕事をしていたが 上司の指示に逆らってクビを切られる。ネットで仕事を探しているうちに、市会議員は割のいい仕事らしいと思いついて選挙に立候補するという、突飛な発想から 貯金をはたいて供託金をつくり選挙に出て、辛うじて当選する。
彼女が飛び込んだ市議会は、黒幕に支配される議員たちと市政を刷新しようとする女性市長とその支持者が対立している・・・この市長は、かつて小池百合子に投票した人たちが抱いていた幻想を人格化したものと見える。この企画が通ったのは、小池百合子をヒーローに見立てるものとみえたからだろう。もしこれが「排除発言」の前に放映されていたら、あるいは排除発言がなかったら、小池百合子の強い追い風になったかもしれない。
排除発言のおかげで、ドラマに出てくる黒幕議員が 安倍晋三だけでなく小池百合子のキャラクターをも引き受けたように見える。だからこそ、この番組について ストーリーが荒唐無稽だとか 視聴率が低いとか 出演者は番組の選択を間違ったなどと 批判的な声が多い。
しかし、これはドキュメンタリーではない。現実の誇張は、小説やドラマの手法のひとつである。
むしろ、国家を運営する現実の行政府が、行政判断をねじ曲げて数十億の国費を失わせたり、それに対する追及を逃れるために衆議院を解散して選挙に600億円も使ったりするような、かつてありえなかったことが実際に起きている。このドラマはむしろ、国家レベルの不正を小規模な自治体に縮小し、日常の距離に引き寄せたものにすぎない。そこに、素人議員である主人公を投じて、常識的な視点であれば 抱かざるをえない疑問や憤りを見せているものだ。
このドラマに対する大方の批判は、そういう現実の出来事を隠そうとしているものにすぎない。
放送時間は、月曜日午後9:00〜10:00フジテレビ。番組ウェブサイト過去の放映分も有料なら見ることができる。
先週はYouTubeで無料で見られたのに、それは一掃された。でも、だれかがまたアップするだろう。
■関連リンク
・「民衆の敵」見逃し配信:過去の放映が有料だが見られます(11月27日まで第1回目は無料)
・第1回 #民衆のミカタ その1/youtube
・#民衆のミカタバッシュタグ/Twitter
- 2017.11.25 Saturday
- -
- 00:27
- comments(0)
- trackbacks(0)
- -
- by 玉井一匡