日本国憲法の実物 と VRメガネのGoogle Earth:実物と仮想現実

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     先週のはじめに本間さんが電話をくれた。

     「新しいVRメガネでGoogle Earthを見ると、すごいよ。見に来ない?」というのだ。VRとはバーチャルリアリティ(仮想現実)のことだ。彼は、ぼくがGoogleマップやGoogleEarthを大好きなのをよく知って言っているのだから、きっと面白いに違いない。

     29日に行くと言ったつもりだったので前日に電話をすると「日にちは決めてなかったから29日は国立公文書館に行くことにした・・・日本国憲法の実物を展示してあるんだ、でも、うちに来るなら公文書館の予定を変えてもいいよ」と言ってくれた。

     

     そう言われると、5月7日で会期が終わるというし ぼくも日本国憲法の原本を見ておきたい。けっきょく 昼に公文書館に行ったあと 本間さんの家に行き、Google EarthのVRを体験させてもらうことになった。公文書館は竹橋の近代美術館のとなりで、本間さんの家は横浜にある。

     

     展示してある実物は 当然のことだが ガラスケースの中に開いて置いてあって、ページを繰ることができるわけではない。展示されているのは、署名のページだった。たしかに、条文そのものは 本で見ようとネットで見ようと 内容に変わりはないが、署名は、その紙にその人が思いを託し じかに書いたものであるから、実物であることが想像を拡げ深める。

     

     この日が昭和天皇の誕生日であったことを、そのときぼくは忘れていた。昭和天皇の「御名御璽」につづき、首相兼外相 吉田茂をはじめ国務大臣 前首相の幣原喜重郎ら内閣の署名が並んでいるのを目前にすると、歴史の事実がここにあるという特別な感慨が浮かぶ。「御名」とは天皇自筆の署名であり 「御璽」が「天皇御璽」と書かれた天皇の実印であることを、このときぼくは初めて意識した。

     ここに国務大臣として名を連ねている斎藤隆夫は、あの反軍演説の斎藤隆夫なのかと気づいた。早くから満州と朝鮮の解放を唱えた石橋湛山は大蔵大臣だが次のページにあるから実物はみられない。この内閣は、精一杯の反軍を結集したものなのだ。

     

     原本の 天皇自筆の署名を目前にすると、戦争を拡大し暴走する軍部に怒り 戦争末期に終結の道を必死に求めたとされる昭和天皇が やっとたどりついた到達点であり、ここから新しい国つくりが始まる出発点であったことが実感されるのだ。

     

     翌30日のNHKスペシャル「憲法70年”平和国家”はこうして生まれた」は、憲法の平和条項が国民の意に反するGHQの押しつけなどではなく、天皇をはじめ、学者・政治家・外交官など 戦時中から平和を目指し唱えていた人々の議論の結果としてつくりあげたことを、新しくみつかった資料によって実証する力作だった。日本国憲法が、どれほどきわどい奇跡的な状況の中で生まれたのか、どれほど大切で、簡単にこわしてはいけないものであるかを納得させると思う。

     

     当時のGHQの中でも政府でも、さまざまに対立する主張があったように、現在のNHKの中にもさまざまな考え方が共存しているのだろう。

     

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     横須賀線と市バスを乗り継ぎ 本間さんの家にたどり着いた。香港 贊記茶餐廳のエッグタルトと珈琲をダイニングキッチンで味わったあと、コンピュータ部屋に降りていった。 中庭をはさんで向きあうリビングルームの半地下にある。クルマはつかわない 土足でいいよと明快に割り切った本間さんらしい住宅、本間さんらしい部屋だ。ちなみに、設計はぼくたちの事務所です。

     

     VRメガネ Oculus Rift は、本体もコードレスのリモコンもかっこいい。両手を出して本間さんがとりつけてもらっていると、さながら ヘッドギアとグラブをコーチに付けてもらうボクサーのような気分だ。本間コーチがタワー型のコンピューターのディスプレイを見ながらGoogle Earthを開いてセットしてくれた。

     あとは、両手の親指でリモコンをつかってゴーグルの中に見える地球を回転させて場所を選び、滑空したり近づいて歩いたりする。動かしかたを なんとかおぼえるまで15分ほどだったろう。

     

     ディスプレイで見るGoogle Earthは世界を「見る」のだが、VRメガネをつけると、ぼくは世界の中に「いる」という感覚で、まったく次元が違う。たしかに文字通り、ぼくは2次元から3次元に移動している。南アルプスで僕は山の中にいることに胸躍らせるのだが、マンハッタンに行くと ぼくが街の中にいるというより 小さくなった僕が模型の都市を歩いているようだ。
     どちらも、振り向けば うしろの景色が見えることに変わりがないのだが、山の景色には建物がないから文字通り現実のように感じられるけれど、都市に行くと 建物は実物とはやはり違う。しかし、ぼくはその街の中にいる。

     

     これだけたくさんの情報を必要とする景色を、身体の動きとの間に時間のズレを感じさせず瞬時に見せる、しかも立体として見せる、そのためには どれほどのスピードで どれほど多くの情報を処理するのだろうかと考えると、気が遠くなりそうだ。

     

     あとなって考えれば、短い時間に 世界を飛び回っているあいだ、ぼくは10cmほどの距離にあるディスプレイに焦点を合わせ続けているはずで、目の筋肉には ずいぶん負担をかけてしまったに違いないが、ああ楽しかったとしか感じない・・・2時間ほど見続けても酔うことはなかった。

     

     半日のうちに、ぼくは「実物」と「仮想現実」をつづけて体験した。どちらも すこぶる興味深い。それを並べて考えてみると、さらに興味深い。
     このふたつは、実物とつくりものという対極にある。実物から引きおこされる感慨と、仮想現実に入り込んで受ける感動と興奮をそこだけに留まらせないで、想像力と好奇心を目覚めさせる。そこで、世界とは何か 世界はどうあるべきかを考えなければならないと、みずからに言い聞かせるのだ。

    ああ、いい一日だった。」
     

    ■関連リンク

    *日本国憲法

    日本国憲法/https://ja.wikipedia.org/wiki/日本国憲法

    大日本帝国憲法/Wikipedia

    国立公文書館

    * VRメガネ

    バーチャルリアリティ/Wikipedia

    Oculus Ruftの公式ウェブサイト


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