ドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」

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     「シチズンフォー スノーデンの暴露」の映画館上映を見逃してから だいぶ時間が経ってしまったが、レンタルDVDを借りにゆくと、おかげで準新作になっていていた。

     この映画には、スノーデンが伝えようとした事実そのものの他に、2つの点でぼくは興味があった・・・スノーデンがどのような人物であるのかを自分の眼で見たい、そして 「暴露:スノーデンが私に託したファイル」に文章として書かれているときのことが、同じとき同じ場で映像という形式で記録されたものは どう違うのかを知りたかった。

     ぼくは文章を先に読んでいたから、事実の経過や背景やスノーデンの意図については理解しているつもりだ。しかし、ひとの気持ちを読みとるのは映像で表情や話しかたを見るにはおよばない。

     

     彼は メディアに携わる人たちから2人の人物をえらび、彼らを信頼するに足ると見込んで、ある情報を託すからマスメディアを通じて世界に公表してほしいとメッセージを送った。

     CIAと NSAが、Facebook、Amazon、Microsoft、Apple、ATTなどのシステムに入って個人の情報や交信の記録を密かに蒐集している・・・その事実を示すファイルを持っていると伝えた。送られたメッセージには、信頼性を確認するため情報の一部が添付された。

     

     上記の本は、この2人のうちのひとりであるジャーナリスト グレン・グリーンウォルドが書き、映画は もうひとりのローラ・ポイトラスがつくった。

     

     はじめは2012年末、メールがグリーンウォルドに送られた。しかし 暗号システムの構築を求められたり、罠やガセネタの可能性も捨てきれず 、グリーンウォルドは しばらくそれを放置していた。翌2013年春、業を煮やしたスノーデンはポーラに連絡をとる。受けとった情報を本物と見たポーラが旧知のグリーンウォルドに声をかけ交信を重ねたのち、ふたりは香港のホテル (The Mira Hongkong) に潜伏するスノーデンに会うことになって、この告発を最初に公表する「ガーディアン」からも記者が加わり、3人で部屋を訪ねた。

     映像は、初めて対面するスノーデンをとらえている。育った家族、組織内の立場、知りうる情報の範囲、今後に予想される拘束や生命の危険や失われるであろう未来の生活や周囲の人々に対する影響についての覚悟などを訊ねてゆく。インタビューは5日にわたる。

     これらの質問に、スノーデンは格別に気負った様子も怒りもあらわにすることもなく、おだやかに淀みなく、笑みさえ浮かべて答えてゆく。

     

     考えてもみないか、彼が直面せざるをえない困難な事態は、すべて彼自身が決断して選んだ行動の結果だ。しかも、それは事前に予想がつく。たとえば、職務上で知った国家機密を漏洩したという廉で合衆国が訴追し重罪を求めることは間違いない。情報機関が行なったことこそ憲法で保障されている個人の自由を踏みにじるもので、それこそが犯罪であると、ぼくたちもスノーデンも考えるとしても、裁判に勝てる保証はない。

     もし、彼がこれまで通りに仕事を続けていけば 戦地から遠く安全なところで送るはずの平和な日々を、ことごとく失うのだ。

     

     周囲の身近な人たちにも この行動と決断をまったく話していないので、当局は 家族や友人から情報を引き出すことはできないから 彼らは安全だと言う。しかし、一緒に暮らしていた恋人にも、このことについて何も言わず、出張すると言って出てきた、そういうことはよくあることだから・・・と言う。  が、そのときだけ表情を曇らせた。スノーデンの不在そのものが彼女にもたらす不安の大きさと悲しみの深さが彼の胸の内にひろがるのだ・・・そういうことを、じかに読みとることができるのは映像であるからだ。

     グリーンウォルドとポーラの残した文章と映像は、両方があってこそ 問題の意味と,それに対する告発の価値を明らかにする。

     

     このときのアメリカ大統領はオバマだった。オバマなら個人情報の利用を一定の範囲に制限しただろうとぼくは思う。しかし いまは,自らを律する原理をもたない人物がそのポストにつき情報を握った。

     かつて僕はGoogleマップを見たときに、こんなに興味深い地図をGoogleが提供してくれることを大喜びした一方で、どうしてこれが無料で使えるのだろうという疑問と不安が生じた。いつか独裁者がGoogleの情報を握って世界をほしいままに動かそうとする時が来るかもしれないと思ったが、それは遠い未来 どこかの発展途上国だろうと思った。  しかし、もう すでにいま それが現実になっている。アメリカ合衆国で。

     

     それでも、この事態が広く知られたことで、インターネットという情報ネットワークの在り方を変えてゆこうという動きが始まっているようだ。下記の3人の TEDにおけるスピーチは、それを知る上で とても興味深い。

    ・・・スノーデンが何を意図したかを自身が語り、グリーンウォルドが、プライバシーを護ることの大切さを力説し、WWWの産みの親であるティム・バーナーズ・リー自身が、WWWの価値(世界中を 小さな無数の拠点と それらを結ぶネットワークで包むことによって誰とでもすぐに語り合うことができるようになったこと)を諄々と説き、新たなルールをつくることを提唱するのだ。

     

    ■TEDにおける3つのスピーチ

    "Here how we take back the internet"(インターネットを取りもどす)/Edward Snowden/2014.10:スノーデン自身が、一種のロボットを通じてTEDの会場に登場し、リアルタイムで聴衆に話し、司会とゲストの質問に答える(字幕つき)

    「なぜプライバシーが必要なのか」/グレン・グリーンウォルド:スノーデンが命がけで守ろうとした個人の情報が、「自由」にとって如何に大切なものであるかを、情熱をこめて訴える/2014.10(字幕つき)

    "A Magna Carta for the web"(ウェブのためのマグナカルタ)/SIR ティム・バーナーズ・リー/2014.03:WWWというシステムの開発25周年で登壇、インターネット憲章をつくることを提案する。彼は、スノーデンのスピーチにもゲストとして登壇(字幕つき)
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