トランボ vs トランプ

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     トランプのような人物が大統領選挙に勝った悪夢に、ぼくは しばし呆然としたが、もっと深刻な悪夢は アメリカという国が トランプを選ぶような状況に 陥っているということだろう。

     

     ギンレイホールで、映画「トランボ」を見た。

     赤狩りに抵抗した「ハリウッドテン」と呼ばれた映画人のリーダーで実在の売れっ子脚本家ダルトン・トランボを主人公にした劇映画だ。

     ぼくは、この人の名前すら知らなかったから、彼が脚本を書いた作品の大部分は中学高校時代に見ていることに驚いた・・・ローマの休日、黒い雄牛、スパルタカス、栄光への脱出、ジョニーは戦場に行った、等々。

     普通に考えれば、ハリウッド映画界を描いた この映画ほどアカデミー賞にふさわしいものはないと思うが、昨年のアカデミー賞では主演男優賞のノミネートにとどまっている。よほどすぐれた作品が他にあったのか、さもなければ 政治的立場から一票を投じなかったアカデミー会員が多かったのか。(因みに作品賞は「スポットライト 世紀のスクープ主演男優賞はレオナルド・ディカプリオ ・・・まあ、これも悪くないか)

     

     トランボは非米活動委員会の聴聞会に召喚され 監獄に入れられるが、ロナルド・レーガンやジョン・ウェインなどは赤狩りの先頭に立って、ハリウッド・テンから仕事を奪い映画界から追い出す側に立った。ぼくは、かつてジョン・ウェインの映画に胸躍らせたことを恥じた。

     アメリカは、国外では数々の戦争を引きおこし、クーデターを企ててきた。しかし国内では、ひとりひとりの国民の自由と権利を拡大してきた。公民権運動が起こり制度上は人種差別が禁止されるようになり、ウォーターゲイト事件では 現職の大統領を違法盗聴行為の廉で辞めさせ、BGLTに対しては差別をなくした。

     

     しかしいま、多くの人たちの長い間の献身と努力と犠牲の上に成し遂げられた成果を、トランプは逆行させ台無しにしようとしている。

    外国あるいは外国人に対する敵意をあからさまにして、KKKの肯定さえした。これまでのアメリカが、不法入国者によって安い労働力を手に入れ利益をあげてきたことを棚に上げて、メキシコ国境に塀をつくることを公言した。

     

     そういう人物に投票した国民がアメリカにはたくさんいるということなのだ。これから始まる4年間には、ますます排他的になって、赤狩りのようなことが行われるのだろう。

     しかし、アメリカには、9.11後の復讐心に燃える時も、それを批判するチョムスキーやスーザン・ソンタグのような人たちがいたし、赤狩りのときにはトランボたちがいた。トランプに対しても、メリル・ストリープのように立ち上がる人たちがいる。

     そもそもアメリカ合衆国は、先住民の土地を奪うことによってつくられた国だ。その国家の存在をまがりなりにも正当化しようとするなら、外からやってくるものを拒まないという信条を、つねに掲げ続けるより他にすべはないはずなのだ。

     

     われわれの政府は、アメリカの大統領が誰であろうと 何を言おうと 言うことをきき、かつて周辺の国に侵略した歴史を忘れて、国民の自由と権利を奪おうとしている。彼らを支持する国民が多数いる一方で、それに異議を唱える人たちもたくさんいる。

     時代は、国と国が対立するのではなく、それぞれの国の中に複数の主張がある。だから、現代の戦争は宣戦布告して国と国が戦うものではなく内戦という形式になるのだ。それを避けながらなんとかやっていこうというのが民主主義というものだろう。

     

    *追記

     アメリカでは、ロシアがサイバー攻撃いよってトランプの有利に選挙を導いたとCNNなどが報道したことにトランプが腹を立てて、記者会見ではこれらに質問をさせなかった。これに対して保守派メディアのFOXが抗議したことを、江川紹子が伝えている。主張の違いこそあれ、民主主義の根幹をなす報道の自由をその上位に置いて、CNNなどを擁護しようとしているのだ。

     しかし、産経や読売が、報道の自由のために政府を批判するなどということは、すくなくとも近年にはない。

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