サムライとヤクザ:ゴッド ファーザー +

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     むかしの話だが 飛行機の隣席に座った客に こう訊ねられたことがある。
    「サムライとヤクザはどう違うのか」というのだ。
     普通に日本語で「あいつはサムライだ」と言えば、おおいに人物を褒める言葉であるし「ありゃあヤクザだ」と言えば 誰もあんなやつ相手にしないというに等しいから、このふたつを比較するということ自体に意表を突かれた気がした。

      彼は30代半ばほどの ユダヤ系スウェーデン人で、近くイスラエルに移住するのだという。つねに戦時下にある国に みずから加わろうとするというにしては、かくべつ気負っている風ではなかった。
     今になってみれば、もっと深く興味深い会話ができただろうにと思うが、時間が残されていなかったのだろう、正確には憶えていないが、こんな あたらずさわらずの 不十分な説明をしたと思う。

    ・・・かつて将軍という権力者が日本全土を支配していた頃、彼は 各地に領主を置いて、サムライは その領主に仕え、本来のサムライは自らを厳しく律した。しかし、君主の死や領土の没収など様々な理由で失業したサムライたち、賭博で身を持ち崩した町民、剣の腕をあげた農民などがヤクザになった。ヤクザたちは制度や法に支えられる社会から逸脱して、賭博や売春で稼ぎ独自の掟にしたがう社会をつくった。厳格な上下関係が秩序の根幹をなし 武力に支えられていることは、サムライとヤクザの世界は似ているかもしれない・・・と。
    しかし、このひとが高倉健のヤクザ映画を見ていたとすれば、フィクションでは ヤクザにもサムライのように厳しく己を律した人間がいたのだが、それは話さなかったな、なにしろぼくはあの時代、一世を風靡したヤクザ映画を一度も見ていなかった。
     そんなことを思い出したのは、ギンレイホール5月の「真夜中のフィルム上映会」で「ゴッドファザー」と「ゴッドファザー2」を5時間以上かけて2本続けて見たときだった。
    マーロン・ブランド扮する マフィアの初代ボスには3人の息子がいるが、三男を自慢の息子と思っているゆえに、彼はマフィアの世界に関わらせないようにしていた。戦功をあげて勲章も受けたエリート軍人なのだ。しかし、反目するマフィアに兄が殺されると 次男はマフィアの2代目を継ぎ、 やがてボスとして成長してゆく。サムライの地位を捨ててヤクザの社会の頂点についたのだ。

     軍隊もマフィアも 目的のためには人間を殺すが、一方は勝てば英雄と讃えられ他方は常習的犯罪者である。軍隊は国のために闘い、マフィアは自分たちの利益のために人を殺すという 両極にある存在とされてきたからだ。しかし、戦場には、かつては隠されたり美化されたりしていたが、じつは重く悲惨な死や肉体的精神的な深い傷が満ちているし、さらには数々の残酷な犯罪行為などもあったことなどを知れば、軍隊とヤクザの間には 本質的な隔たりはないのかもしれない。

     兵士が祖国を守るために己の命をかけている一方で、自分たちは決して危険には近づかずに 武器を売り、株価の変動に抜け目なく立ち回り、戦争で利益をむさぼり、戦争が終われば戦後復興の工事を請け負ってまた儲けるという人間がいる。そういう連中が戦争を誘導し、やめさせまいとするのだ。
     それは 過去の、あるいは海のむこうの別世界の話だと思っていたが、じつは現在の日本でも戦争の悲惨によって儲けようとする商売人のいることを、財界がみずから明らかにした。安保法案の可決を待ちきれないかのように、経団連が武器輸出の解禁を求め 政府はそれに応じる姿勢を示したのだ。これほど あからさまなふるまいを見ると、マフィアと軍隊はどちらの方が悪いのかますますわからなくなる。

     いいかげんな比喩や比較は安部晋三みたいだから、少々 修正しておこう。
    マフィアは 財界と軍と政府とが一体化した 独裁国家のような組織だから、マフィアは軍隊よりも 国家と対比するほうが正しいだろう。マフィアが人々をクスリや賭博で中毒に追い込んで利益をむさぼるように、独裁国家とその権力者は 戦争であれ 原発であれ 外国に基地を貸すことであれ、国民の犠牲と引き替えに利益を得て 権力をのばす。現在の日本の政権は 一歩一歩 独裁に近づいている。


     独裁は決断も行動もはやく効率がいい。石原慎太郎や橋下徹が あたかも明快な決断力を持つ頼もしい政治家のように見えるのは、想像力が乏しいことも手伝って彼ら自身の頭の中で複数の意見と可能性を検討せず、他の意見を排除するために議会を軽視し記者会見で批判的な質問を封じるからだ。

     同じように、安倍晋三、麻生太郎ら 現在の内閣を構成する面々も、ひとつの意見で法令をつくり 行政をおこない それを肯定するマスメディアが報道するという国家運営を目指しているとしか思えない。

     独裁がうらやましくて仕方ないこの諸君は、さすがにマフィアを見習うとは言わないが、麻生太郎はナチスのやりかたを見習えばいいと言い出した。麻生があの顔と声で「オレはマフィアだ」と言っても、あまりに似合いすぎているからナチを見習おうなんて言ったのだろう。
     ヒトラーによく似た安部は
    麻生のアドバイスを受けて、議会の諮問機関にはあらかじめ政府の意見に同調する人物を置き、NHKの会長には政府の言いなりになる商売人を送り込んで番組の内容にも干渉する。いずれ最高裁判事も首をすげ替えて、自衛隊海外派兵を憲法の改定を合法化しようと画策しているだろう。この政党がどうして「自由民主」などと名乗れるのだろうか。 

    コメント
    kawaさん
    今頃になって思い出しましたが、アルパチーノは三男だったということを訂正していなかった。
    kawaさん
    返信コメントおそくなりました。
    おっしゃるとおり、アル・パチーノは三男でしたね。ないがしろにされている軟弱な兄貴がいたのを思い出しました。

    kawaさんのおっしゃるのは勝てば官軍と同じで、勝てばサムライ負ければヤクザってことですね。考えれば考えるほどサムライとヤクザというのは区別がつかなくなってきますね。
     元をただせば、サムライは貴族の用心棒だったわけだし、七人の侍は盗賊から命がけで村人を護ってやる強い奴らだったものの、何百年後のサムライたる軍隊は、隣国に攻め込んで女を徴用し慰安婦にしたり、民間人を殺したりレイプしたりした挙げ句に、非難されると濡れ衣だと怒るという始末。
     
     そういえば、暴力団というのは、戦争中は人殺しの専門家としてシード扱いで軍隊に招聘されるのだろうかと思ったことがあります。戦争中にヤクザはどうなったのでしょうね、前から気になっていました。
    • 玉井一匡
    • 2015/10/12 10:09 PM
    何度もすみません。次男が役立たずで三男がアルパチーノだった気もします。
    • kawa
    • 2015/10/10 3:07 PM
    侍とヤクザは別のものだ、分けて考えよう、って考えがそもそも日本人の抱える嘘だというのはいかがでしょうか。毎日田んぼを耕す事を嫌って刀を振り回す事で律令や荘園制度からはみ出たものを、その乱暴さゆえに体制側が取り込む事を考えざるを得なかった。殺し合いだけが価値の基準だった世の中では大いばりだった侍が泰平の世の中で自らのレーゾンデートルを捏造するために必要だったのが、義だの忠だのなんて大嘘だってのは如何でしょうか。�忠忠忠義
    • kawa
    • 2015/10/10 2:23 PM
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