テルマエ・ロマエ

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     「テルマエ・ロマエ」という映画がすごく面白かったと聞いていたし、階下のギンレイホールでも上映された。にもかかわらず僕が見そこねたのは、日本人が古代ローマ人の衣装をつけて出てくるというのを気恥ずかしいと感じたからだろう。

     ところが先日、原作者のヤマザキマリと中村勘九郎の対談を見ると、ヤマザキというひとはやりたいこと言いたいことが体中にみなぎって どうにも押さえきれないほどだから、対する勘九郎は押しまくられて土俵伝いに逃げまわるといったぐあいだったので、俄然 このひとに興味が湧いた。さっそく図書館で借りたエッセイ「テルマエ戦記」を読んだ。


     シングルマザーとしてイタリアで出産した息子、10歳以上も年下の歴史学者であるイタリア人の夫、そしてシリアの街で拾った猫という複雑な家族構成でポルトガルに住んでいる。それだけで波瀾万丈の日々が想像されるが、40歳代で書いたテルマエ・ロマエの大ヒットのおかげで、売れない漫画家から締め切りに追われ睡眠不足に陥る人気漫画家に躍り出て、さらにあちらこちらを動きまくってしまうおのれの姿を笑いのタネに爆笑哄笑をひきおこす。

     当然ながら、つぎにテルマエ・ロマエの原作を読みたくなったが図書館には漫画なんて所蔵しているはずもない。さりとて、買いそろえると高いからAmazonのマーケットプレイスを探した。

     鵯巻から鶩巻までの「非常に良い」という状態の本が1円であったから、さっそく注文した。1冊ごとの送料250円を含めても5冊で1,255円也。この安さ感をそこないたくなくて、鶲巻はあとで注文することにした。それもいまはもう注文してあるから明日あたり届く。少々高いといっても、送料とも281円なのだが。

     期日前投票で意気込んだ都知事選挙なのに原発推進と野心を両手にした候補の圧勝という結果にあきれ腹立たしい今週初めに、テルマエ5冊がつぎつぎと届けられた。第1巻が2010年の初版だから、いまごろになっておもしろがっているのはいささか乗り遅れだろうが、漫画を買うのは「夕凪の街 桜の国」以来だったからむさぼり読んだ。

     主人公は古代ローマで浴場を専門とする建築家ルシウス。あるとき思いがけず、ローマの浴場から現代日本の「平たい顔族」のじいさんたちでいっぱいの浴場にワープしてしまう。

     風呂をくつろぎと交流の場とするという一点でつながる、日本と古代ローマのあいだを、こんな風にして行き来するたびに、そこで出会う属州の奴隷とおぼしき老人たちの風呂に盛り込まれたアイデアの数々をローマに持ち帰って浴場の設計に生かしているうちに、ローマで引っ張りだこの浴場建築家になる。やがて、評判をききつけた皇帝ハドリアヌスの信頼を得て側近になってゆくという荒唐無稽だ。

     古代ローマ人の日常生活を、その中に立って描写した小説は皇帝ユリアヌスやジュリアス・シーザーくらいしか読んだことがない。キリスト教を前にした皇帝や権力を手にした軍人の悩みは生活者の日常とはかけ離れているが、テルマエロマエは、作者の切実な体験と発見をふまえた 異文化に対するおどろきや尊敬、ときに反発が爆笑を噴出させる。

     

     5巻は1日で読み終わった。 東京が雪に包まれた金曜日、帰りがけにTSUTAYADVDを借りた。

     古代ローマのシーンの撮影は、チネチッタの、かつて歴史物を撮ったセットを使ったというだけあってリアリティがあるから、なおさら日本の風呂屋、温泉や家庭の風呂と、そこに浸かる「平らな顔族」たちの対比がおかしい。主人公ルシウスをイタリア人でなく阿部寛にしたのが大正解。劇場で見なかったのがいまにして悔やまれる。

     ところで、漫画化された「スティーブ・ジョブズ」も、このヤマザキマリが描いていることは勘九郎との対談で知ったのだが、これも読むことになるだろう。


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