ジュリーの贈り物

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     東京新聞の第一面に「ドナルド・キーンの東京下町日記」というエッセイがときどき掲載される。どういう間隔で何曜日なのか、まだ僕は知らない。

     きのう4日に、今年はじめての東京下町日記が掲載された。「憲法9条の行く末憂う」というタイトルで、日本の政府と与党が9条を変えようとし、さらに中国や韓国とことさらに摩擦をおこしたり秘密保護法を強引につくったりしていることを心配しているのだが、本当はどなりつけたいところだろう。帰化したときにつけた鬼怒鳴門という日本名は、こういう時のために選んだ文字にちがいない。これまではお客さんだったから口にできなかった批判も、これからは言うことができると、帰化したときのインタビューで答えていた。
     このエッセイは、「Uncle Donald」という曲を収めたCDが沢田研二から届けられたというエピソードから始まっている。「Uncle Donald」は沢田自身が作詞した歌で、この国を愛してくれることへの感謝と、地震のこと被災者のことを忘れそうな「僕たち」に失望しないでほしいという思いを歌っている。ドナルド・キーンはこのとき、沢田研二が何者であるかも、かつて何者であったかも知らなかったそうだ。(しかしキーンさんは、この贈り物をとてもよろこんでいるらしい写真を掲載したブログがある:沢田研二さんがキーン先生に捧げる歌/「弘知法印御伝記」を上演した越後猿八座の記録)

     この記事にも書かれているが、年末にBS-TBSの瀬戸内寂聴との対談でドナルド・キーンはこう言っている・・・ 太平洋戦争のあと60年以上も日本人はひとりも戦争で死んでいないのは この憲法のおかげだと。今の憲法がつくられたころ、戦争の悲惨にこりごりしていた日本人の大部分はこの憲法を歓迎したから、そのころ通訳としてともに働いたことがあったであろう ベアテ・シロタ・ゴードンが憲法草案に盛り込もうとした男女同権には抵抗があったけれど、9条には反対意見がほとんどなかったとも書いている。

     彼が憲法を護るべきだと言わずにいられないのは、みずからの戦争体験によるものだ。海上では日本の特攻機に、沖縄の防空壕では銃を持った兵に、殺される寸前まで至ったことがあった。英語訳の源氏物語に感動して日本文学の研究を始め、その後、戦争が始まると軍隊に招集されたキーンは、戦後も通訳で駐留軍の一員として日本にとどまり、ますます日本に惹かれていった。平時であれば友人になれるはずの人々と殺し殺されねばならない関係を強いる戦争というものが、いかに愚かな行為であるかを実感したのだろう。

     ドナルド・キーンやサイデンステッカーなど、日本文学の研究者が古典から現代文学までを英語訳してくれることがなければ、日本語を現在の地位に引き上げることはできなかった。そういう意味で彼らは日本語と日本文学の大恩人なのだと、かつて「日本語が亡びるとき」で水村美苗は書いている。
     どこの国にも、愚かなあるいは邪悪な人間がいる。それだけならまだしも、彼らは、ほかの多くの人々を愚かにも邪悪にも変えてしまう。すでに高齢に達した恩人に、ふたたび力をお借りしなければならないのはまことに心苦しいが、ことは日本だけの問題ではなく人類に普遍的な問題であるのだから、もういちど力をお借りしてでも、原発をやめ憲法を護ろうとする人をまずは東京都知事に選びたい。
     
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    Uncle Donald/沢田研二/Amazon:Amazonから250円で買えます

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