「宝島」
面白かった。
戦後の沖縄で アメリカの圧倒的な力の支配に抗うことによって、自己と沖縄を必死で構築してゆく若者たちの物語である。
タイトルは「宝島」というものの、一攫千金の話でも浮わついた夢物語でもない。「ヌチドゥタカラ:命が宝」という沖縄のことばがあることを ぼくたちも知っているけれど、おそらくこれは そこで言う「宝」なのだ。
戦後沖縄で起きた米軍がらみの事件を下敷きに、いわゆる沖縄返還の頃までを時代背景にしている。いや、本当の主人公は「沖縄」そのものなのかもしれない。
ぼくは2回も電車を乗り越すほど 夢中になったにしては、読了まで1週間以上かかってしまった。
沖縄の出来事を憶えてはいても、そのときの沖縄のひとたちの思いを知っている訳ではないから、読み始めのぼくは さながら 見知らぬグループのデモに紛れ込んだようで 心から共鳴することができないままだったからだ。
とりわけ、この物語の軸をなす「戦果アギヤ−」(戦果をあげる者たちといった意味だと書かれている)という言葉は、この本で はじめて知ったものだった。家を焼かれ家族を殺され土地を奪われた沖縄の 敗戦直後の若者たちがつくったチームが、綿密な計画を立てて米軍の基地に潜り込み、物資を盗んで来るのだ。
これがフィクションなのか歴史上の事実であったのか ぼくは分からず、 したがって どう受けとればいいのか定かでないままに読みすすめていた。
- 2019.02.20 Wednesday
- ひと
- 19:48
- comments(0)
- -
- -
- by 玉井一匡