ドキュメンタリー映画「スープとイデオロギー」
「スープとイデオロギー」を観た。
重くて根の深いテーマを取り上げながらユーモアを交えて描写してきたヤン ヨンヒは、常に自身の家族を題材にした。父、姪、兄、につづいて、母を中心にした このドキュメンタリーで家族の顔ぶれが揃うことになる。
できごとや環境のきびしさにもかかわらず この人の作った映画は あと味が悪くないのは、底流に家族への愛情が感じられるからだろう。
監督のヤン ヨンヒ(梁英姫)は、2012年の「かぞくのくに」で、作品がキネマ旬報ベストテン1位になり、安藤サクラが主演女優賞をもらった。
3番目の兄が北朝鮮から病気治療で帰国するが、 監視がつきまとい 行動に干渉することに妹は強く反発する。監督自身の体験を妹の視点で描いた劇映画の前に、2本のドキュメンタリーを作っている。
彼女は、大阪 鶴橋のコリアン コミュニティで生まれ育った。父は 末っ子の娘をのぞき三人の息子をすべて、帰国事業で北朝鮮に渡らせた。
かつて 読売新聞が、大々的に金日成の唱える「主体(チュチェ)思想」を讃える記事を見開きで掲載したことを、ぼくは記憶しているが、日朝の政府がそれぞれの思惑のもとに主導した「理想の国づくり」を信じて息子たちを手放し、現実には 彼らを辛い状況に置くことになってしまった父に対して ヨンヒは抑え難い反発をかかえながらも、両親との間には愛情が通っている。
- 2022.07.05 Tuesday
- 越境
- 06:44
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- by 玉井一匡