映画「黒い雨」

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     毎年この時期の一週間、神楽坂では「まち飛びフェスタ」というイベントが開かれる。まちが飛ぶんじゃなくて、まちへ飛びだそうというんだ。

    ギンレイホールは、「神楽坂映画祭」と銘打って この地にかかわりのあるテーマで選んだ映画を上映して参加する。

     

     去年は、神楽坂に育ち いまも住んでいる加賀まりこの出演作を上映したが、今年は「新潮社から生まれた名作映画たち」というテーマで構成された。神楽坂に本社のある新潮社が出版した小説を原作としてつくられた映画を毎日5〜6本ずつ上映したが 今年も終わってしまった。

     

     見たいと思う映画は数本あったのだが、じっさいに見たのは一本だけ、ふた月ほど前に小説を読んだから これだけは見逃すまいと思っていた「黒い雨」だった。映画というものは、小説を先に読んでから見ると物足りないものだが、これはそうではなかった。

     

     映画が制作された1988年は 原作者 井伏鱒二が存命中であるし、今村昌平が監督だったからできたのだろうが、小説にはなかった人物を映画では登場させているし、小説には書かれていないできごともある。小説になかった視点をもって発言をする登場人物もいる。


    「この人から受け継ぐもの」を図書館で借りたけれど、買うことにした。

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      「この人から受け継ぐもの」井上ひさし/岩波書店

       この本のことをaki's STOCKTAKINGで知って、さっそく図書館に予約して読んだ。
      この時代に、なんと惜しい人をぼくたちは奪われたかと、また嘆かずにいられない。

       先週の金曜日にギンレイホールで見た「駆け込み女と駆出し男」という映画は、江戸時代の駆け込み寺を舞台にした物語だが、これが たまたま 井上ひさしの「東慶寺花だより」を原作としている。 男からは勝手に妻を離縁できるが  女から離婚を求めることの出来なかった時代に、わけあって離縁したい女が 駆け込み寺の山門に駆け込んで 寺の修行を2年続けると 離縁できる。男は、その間手を出すことが出来ない・・・不十分とはいえ 女の権利を保障していた。つまり、封建制下の江戸時代でさえ、外界から切り離され独立した自治共同体であるアジールとして認められる寺があったのだ。

       「東慶寺花だより」というタイトルを一見すると のどかな日常を描写する物語のようだが、かならずしもそうではない。ぼくは映画を見たが小説はまだ読んでいないから、ディテールのニュアンは違うだろうが、小説も骨格は変わらないだろう。
       この物語を、「吉里吉里人」「ひょっこりひょうたん島」「ボローニア紀行」などと並べてみると気づくのは、井上ひさしが、自立する小さな国 やコミュニティを終生にわたって考え続けた、あるいは独立する小さな国をつくることによって国家のありようを考え続けた人であるということだ。

       

      ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショー

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        「ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯 」/ヴォーンダ・ミショー・ネルソン著/あすなろ書房 
         
         この3つ前にエントリーした「かもめブックス:本屋は大きくなくてもいい」に友人の加嶋裕吾さんのコメントがあって「ハーレムの闘う本屋という本がとても面白かった」と書かれていた。

         数日後ぼくは、かもめブックスに行ってカウンターの店員にiPhoneで表紙の写真を見せて「ハーレムの闘う本屋 という本はありますか?」と訊ねた。
         彼はうなづいて店の中央にある本棚の下段から大判のハードカバーをとり出した。もし、なかったら・・きっとこの店にふさわしい本だよ・・と言うつもりだった。
        表紙のデザインが晶文社の本みたいな感じだ。晶文社の本の装丁は、大部分が平野甲賀の手になるものだが、彼はこの近くに住んでいた。

         さて、この本屋の「闘う」相手はなにものか・・・場所はハーレムだから黒人の店であり、だとすれば敵は白人、いや白人の支配と差別だ。
        公民権法などまだ遠い未来だったころ、黒人は学校さえろくに行かなかっただろうし、本を読むことなんて滅多にない1930年代にニューヨークのハーレムで本屋を開き、やがてそこを黒人の文化と権利獲得の拠りどころに育てていったルイス・ミショーという人の生涯を描いたものだ。
         ドキュメンタリーノヴェルというのか 、ルイスを知る人へのインタビュー、マルコムXなど店にゆかりの人々の写真、FBIが危険人物とみたルイスについての身辺調査記録などを年代順に並べ、ところどころ余白があるからなおさらだが スクラップブックのようで、とてもいい感じだ。

         この本には、著者の視点を示すべき地の文がない。それがむしろ読者の想像力をうながして、ぼくは本を読みながらいつにもましてインターネットやGoogleマップを開いて世界を拡げてゆく。 
         著者は主人公ルイス・ミショーの弟ノリスの孫で、図書館勤務のかたわら15年の時をかけて書きあげた。文末の覚え書きと謝辞でやっと現れる彼女自身のことばによれば、すべてがインタビューや印刷物など資料にもとづいているけれど、さまざまな記録に食い違いが少なくないので、それをまとめるのが難しかったし、食い違いは本筋にとっては些細なことだと考えてスクラップブックのような形式にして、いくつかのエピソードをまとめるために架空の人物もつくりだした。

        「死都日本」は希望の書

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          「死都日本」/石黒耀/講談社文庫

            口之永良部島浅間山箱根御嶽山の噴火、小笠原の地震と続けざまに火山の活動が活発になるので、これからどんなことが起こるのだろうかと、4年前に読んだ本をもう一度読んだ。2011年のはじめ、新燃岳がさかんに活動していた頃に友人に勧められて読むと、ほどなく東北の地震があった。

           この物語は、死火山とされていた巨大火山(現在の加久藤盆地)の破局的噴火を描いたものだが、題名から思い浮かべる死や滅亡の物語よりも、むしろ死と再生の物語だ。
           2003年に世に出た小説でありながら、8年後の東北の大地震とその前後を予見していて、さまざまな描写にもストーリーにも破綻なく、ドキドキしながら一気に読破させられることを考えれば もっと広く読まれるべき本だ。にもかかわらず、あまり知られていないのは不自然に感じるほどだ。マスメディアは土地価格の低下などの影響に配慮しているのだろう。いいかえれば、それほどにリアリティのある物語だということだ。

           ・・・戦後長年にわたる官僚と保守政党は、一党支配によって内需を拡大するための対策として公共事業を増やしつづけて莫大な財政赤字をつみあげ、自然をこわし、私腹をこやした。それに我慢ならなくなった国民は、選挙で野党に劇的な勝利を収めさせた。新政権がさまざまな改革を進めているときに大噴火がおきる。

          「沖縄 うりずんの雨」

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            「沖縄 うりずんの雨」:監督ジャン・ユンカーマン、企画・製作 山上徹二郎
            岩波ホール 6月20日より公開


              久しぶりに試写会を観た。「うりずんの雨」というドキュメンタリーだ。
            パンフレットにはこう書かれている・・・・「うりずん」は、潤い初め(うるおいぞめ)が語源とされ、冬が終わって大地が潤い、草木が芽吹く3月頃から、沖縄が梅雨に入る5月くらいまでの時期を指す言葉・・・しかし、1945年は3月に米軍の沖縄に対する攻撃が開始され6月に沖縄の日本軍は壊滅した。米軍の沖縄に対する攻撃は鉄の雨と呼ばれるから、うりずんの雨とはアメリカ軍の打ち込んだ銃弾の雨を意味するはずだ。

             映画は、米軍の攻撃開始から辺野古基地の建設が始まろうとしている現在まで、戦争と基地を通して沖縄の70年を、保存された記録映像とインタビューによって描き出し、沖縄の未来を問う。
            山上徹二郎の主催する企画製作会社シグロの 創設30周年を記念した作品である。監督のジャン・ユンカーマンはアメリカ国籍だが子供時代を日本で過ごし高校も日本で学び、長年にわたって日本に在住しシグロのドキュメンタリーを撮っている。このひと以上に、アメリカと日本をよく知った上で沖縄を描ける映像作家はいないだろう。

             これまで、「老人と海」で沖縄の自然と生きる人間を描き「映画 日本国憲法」ではアメリカ、アジア、日本の関係者にインタビューを重ねて憲法の成立の経過と意味を問い、これが単なる押しつけ憲法ではないことを示した。「9.11チョムスキー」では、9.11の攻撃に対し、アメリカが それまでの己
            振る舞いを棚に上げて 感情的に報復したことを 厳しく しかし穏やかに批判するチョムスキーを撮った。いずれもシグロで製作された。
             そしてこのドキュメンタリーでは、沖縄の住民がどのように戦闘に巻き込まれ、なにゆえアメリカの基地が沖縄に置かれ、それによって何が起きたかを示し、さらに新たな基地をつくることによって未来がどう変えられるのかを考えようと問いかける。

            「武装解除」

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              「武装解除」/伊勢崎賢治著/講談社現代新書

                武力紛争の現場にあって外国の軍隊を指揮するという 現在の日本では稀有な経歴を持つ人の著書を読んだのは、友人石原秀一さんにメールで薦められたからだ。

               東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンという、激しく凄惨な武力紛争の地で 著者の活動と眼を通して 武力紛争のありさまを知り、現行憲法のもと日本の置かれた状況の中で我々はどうすべきなのかを考えさせる。
               さらに、行政も治安も 国家をつかさどる主体がほぼ失われたところで、それを組み立て直す過程を見るうちに、国家とは何なのかをぼくたちは考える。

               著者伊勢崎賢治は、建築学科の大学院在学中にインドの大学の国費留学生となって、ボンベイ(ムンバイ)のスラムで生活環境の改善にたずさわるが、それにあきたらずインドのNGOの職員としてスラムに住み込んで 内側から住民の市民運動を支援し指導する仕事に就く。その後、国際NGO・Plan Internationalの職員となって西アフリカのシエラレオネに派遣され 現地事務所 所長となると、豊富な資金もあって なかば行政府の長のような立場で多くの公共事業を行い、ケニヤ、エチオピアにも赴任して10年間を過ごした。

               一時帰国して数年後、国連の主導する暫定統治機構の一員となって日本から派遣され インドネシアから独立する東チモールの、国家としての基本的な骨格づくりをおこなった。本人は県知事のような立場と言うが、読んでいるとむしろ かつてのマッカーサーに近いかもしれない。規模は小さいが、旧行政府がなくなり憲法すらいまだつくられていない国で、武装解除から軍隊まで含めた秩序を作り上げるのだから。

              後藤健二さんの著書を買って読もう

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                Click→後藤さんの著書(Amazon)

                 囚われた後藤健二さんについての報道を、これまで僕は見る気にならなかった。
                政府には本気で救出しようとする気はないはずだから、いつかは「処刑」という結果になるだろう、 そういう結果を海外派兵実現の格好の口実として、望んでさえいるだろうと思うと腹立たしくてたまらなかったからだ。

                 まして、古賀茂明氏孫崎享氏が指摘するように、わざわざ中東まででかけた首相自身が有志連合に2億ドルを出すと見せつけたことがこの事態を招いたのだとすれば、何の敵意もない人間を斬首することと、自国民が拘束されていると知りながら 札びらを切って 相手と敵対する側に渡すよと見得を切ってみせるふるまいを比べたら、どちらが蛮行というにふさわしいかわからないほどだ。
                もし、彼とその背後にいる人々の目論見どおりに海外派兵などということになれば、戦場に巻き込まれた市民が日々の平穏を失われるつらい生活や無残な死を伝えようとする 後藤さんのような報道は、秘密保護法のもとに禁じられるだろう。

                 まずは後藤さんの本を買って読もう。・・・・後藤さんのしてきた活動を支持するという意思表示に、言うまでもなく後藤さんが何を志していたかをよりよく知るために、そして 残された人々の支援のために。
                後藤さんの死を契機にして、これまで彼が伝えようとしてきたことが広く知られるようになって、軍拡、軍事産業・研究の解禁などの動きを止めることができるなら、命をかける結果になった後藤さん自身も本望だろう。
                関連サイト
                後藤さんの会社 INDEPENDENT PRESS のウェブサイト 
                後藤健二さんの著書
                *YahooJapan News
                人質家族が泣き叫べない日本の異常ーイスラム国による邦人人質事件での親族の抑制  
                *HUFFPOST
                後藤さん殺害事件で「あさイチ」柳澤キャスターの珠玉の1分間コメント
                後藤健二さん人質事件 BBCが「自己責任論」や「日本人らしさ」報じる 
                池上彰さんが悼む「後藤健二さんの不存在は、ジャーナリズム界の損失」【イスラム国】 
                「安倍首相の発言が引き金に」 孫崎享さんがイスラム国への対応を批判 
                後藤健二さん「憎むは人の業にあらず...」 紛争地の人々に寄り添い続けた日々 
                *日刊ゲンダイ
                古賀茂明氏が語る「I am not Abe」発言の真意
                *【AFP記者コラム】
                「イスラム国」の斬首動画が報道機関に突きつけた課題 
                *CHRISTIAN TODAY
                隣人を愛する人 国際ジャーナリスト・後藤健二さん

                 

                ジュリーの贈り物

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                  Click to  read 東京新聞
                   
                   東京新聞の第一面に「ドナルド・キーンの東京下町日記」というエッセイがときどき掲載される。どういう間隔で何曜日なのか、まだ僕は知らない。

                   きのう4日に、今年はじめての東京下町日記が掲載された。「憲法9条の行く末憂う」というタイトルで、日本の政府と与党が9条を変えようとし、さらに中国や韓国とことさらに摩擦をおこしたり秘密保護法を強引につくったりしていることを心配しているのだが、本当はどなりつけたいところだろう。帰化したときにつけた鬼怒鳴門という日本名は、こういう時のために選んだ文字にちがいない。これまではお客さんだったから口にできなかった批判も、これからは言うことができると、帰化したときのインタビューで答えていた。

                  半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義

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                     半藤一利と宮崎駿の腰抜け愛国談義/半藤一利・宮崎駿/文春文庫
                     
                     今年も8月15日は朝から愛国者諸君がけたたましい音楽を流しながら街宣車で走ってゆく。飯田橋界隈は靖国神社が近いから、このあたりを周回しているのだ。

                     買ったばかりのこの本を 娘がテーブルの上に置いたまま福島に行ったようで、手にとってみると、先日 NHKで放映されたのと同じ 半藤一利*宮崎駿による対談である。
                    テレビ もすこぶる面白かったけれど 1時間番組だったのに対して、こちらは7時間あまりの対談のうち、些事を落として文字に起こしたというのだから、もっと面白いはずだ。8月10日第一刷という、出来たての本だ。

                     
                     言い方が少し違うところがあるので、それぞれ別の対談なのかもしれないとも思ったのだが、読んでいると、とても繰り返すことなどできそうにないことがわかる。 編集の違いなんだろう。

                    風立ちぬ

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                      Caproni Ca.60 
                       アカデミー賞の表彰式にさえ出席しなかった宮崎駿が、この映画の公開を前に改憲反対の意見を明らかにして、韓国のマスメディアの記者会見にも応じた。
                       それに反発する連中も少なくないだろうから、参議院選挙の投票日を前にした初日の列に加わることで ささやかに応援するつもりだったのにぼくは行きそこなった。娘がプレゼントしてくれた前売り券をもって2週間後の日曜日に最終の21:40に行くと、それでも前から2つの列しかあいていなかった。

                       飛行機の物語だから下から見上げるシーンが多いし、高いところにいる菜穂子を堀越二郎が見上げることが多かったから、二列目の席からスクリーンを見上げるのが、むしろリアリティを増した。
                       戦争に反対するのに飛行機が大好きという、自分自身の矛盾に向き合うべきだと、鈴木敏夫がこの映画の制作を宮崎に勧めたそうだけれど、戦車が大好きだが平和主義であるという もっと矛盾の大きいひとを、ぼくは長い間身近に見てきたから、宮崎さんの思いはわかるつもりだ。矛盾するところのない人間なんて、プロパガンダ映画に登場する若者のようで、ちっとも魅力がないもの。
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