アキノ隊員・虫・やんばる・ヘリパッド

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     下北沢にダーウィンルームという魅力的な店がある。昆虫の標本、動物の剥製、化石、ルーペ、そして自然科学に関わるもろもろの本・・・ etc 。ぼくたちが自然について抱くさまざまな好奇心に応え、好奇心をそそのかす まちの自然史博物館だ。
     自然の切れっ端とそれを見つけたり解読するための道具がところせましと置かれているので、客の立っている場所は少ししか残されていない。どこへ行くにも いつも MacBookを入れたバックパックを背負っているぼくがこの店にいると、ふと気づけば他のお客さんにとって大きな迷惑になっている。

     8月22日 土曜の夕刻、宮城秋乃さんの話を聞くために、ぼくはダーウィンルームに行った。会場は店の2階にある。あとできくと、前のテナントだった美容院が出たので すぐに借りることにしてしまったという。階下の店の2倍以上ありそうなスペースをつかって、映画の上映、音楽のライブ、あるいはこの日のようなあつまりを開いているが、カフェをやるつもりだと店主の清水さんはおっしゃる。いまも、カモシカが壁から首を伸ばしているのだが、下の店とまじりあって きっと面白いカフェになるだろう。

     話がきまってたった2日でダーウィンルームの清水久子さんの手でつくられた魅力的なチラシに、ぼくはそそのかされたのだった。

     アキノさんは、自由な時間があれば 朝から晩まで やんばるの森にいて 虫、野鳥、カエル、ときにはヒメハブや蚊さえ自分と同じ生きものなかまとして、彼らの生態をじーっと見ている。そうしているうちに、昆虫の新種や 過去に2,3例しか見た人がいないようなやつに遭遇したり、行動の規則性を発見した。

     沖縄の医療関係者の開いた昆虫の標本展を見て蝶たちと運命の出遭いをすると これこそ進むべき道とさだめ、捕虫網で虫を捕まえて標本をつくることから始めたものの、いろいろな作業が面倒だったというけれど、そうではなくて、はやく森の中にもどりたくなったにちがいない。そこで、デジカメで写真を撮ったが、それも 思うように撮れない。つぎに ビデオで動画を撮ると、やっと自分の方法にたどりついたと納得する。記録と観察の方法の変遷が、彼女の関心のありようをものがたる。

     それぞれどの視点も方法も 自然とはなにかを読み取り伝えるものではあるが、彼女にとって虫たちは蒐集する個体でもない、自然の一瞬の美しさでもない、自然を観る視点を虫たちの生態に託すのだ。昆虫を観るのではなく昆虫の目でやんばるを 沖縄を そして自然を見るのだ。しかし、因果なことに、この人は虫の世界だけにとどまってはいられない。それが侵害されようとすればじっとしてはいられなくなる。


    アカショウビンを帰す

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        もう3週間前の水曜日の朝のことだ。長野県栄村にある北野天満温泉の玄関前で立ち話をしていると、手網に重そうなものをいれて親子四人連れが車を降りて来た。
       
       近くの道路を車で走っていたら、道ばたに飛べずにいたので網に入れて連れてきたのだが、これは何という鳥だろう、どうしたらいいだろうという。
       カワセミの仲間のアカショウビンであることは、ぼくにも分かった。なにしろ初めて実物を目にしたうえに 2,30cmの距離にいて、くちばしの鮮やかな赤と 腰の気まぐれな青が つややかな褐色に浮かぶコントラストに、ぼくは胸をドキドキさせていた。
       
       くちばしの先に指を近づけると食いつこうとするし、目には精気がある。そのくらいの元気はあるのだが、さりとて羽を動かして飛ぼうともしないし、声も出さない。パニックにおちいっている様子もない。
       iPhoneでWikipediaのアカショウビンのページを探して見せてあげると、何者であったのかが分かったからだろう4人はひとまず得心して、今晩もここに泊まりますが、鳥をよろしくといって出かけていった。そのとき、アカショウビンは、手網から段ボールに移してやった。

      干し柿と雪の夜嵐

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         昨夜、新潟では猛烈な風が雪まじりの強い雨を横なぐりにたたきつけ、窓と木の枝を鳴らした。ときに雷さえ加勢したが、夜中にぴたりと風がやんだ。

         一夜明けると、落ち葉と冬枯れの枝のうえに白いレイアが重ねられている。2週間前に少しだけ取って皮をむいた軒先の柿のシルエットに手をふれれば干し柿らしい手応えになりはじめている。
         
         柿は、季節ごとに魅力的な木だ。
        地上にパラソルをさしかけるような樹形、快活な若葉、葉の厚さのわりに陽を透す夏の葉群れ、秋には一枚ごとの葉が錦秋の山のように色とりどりに変わる。そのうえ実をつけて食べられるし、枝に残しておけば鳥たちがやってくる。

         干し柿にすれば秋の景色をつくることもできるのだから文句のつけようがないはずだが、都市ではあまり見かけない。たくさんの葉っぱを落とし大きな実をつけてそれが落ちるというのが都市では大きな欠点なのだ。
         人間の手が加えられて柿の棲み分けがなされ、それが田舎らしい風景をつくるのだとすれば、それも悪いことではない。

        「皇居・吹上御苑の四季」

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           数年前、宮内庁が所蔵する伊藤若冲の絵が皇居の東御苑で展示されることを知って見に行った。大手門をくぐってすぐにある御苑への入口で風呂屋の下足箱で使う鍵につけられたような番号札を渡され、出るときにはそれを返すだけの単純素朴な仕組みがおもしろかった。

           会場は、門のすぐ近くの「三の丸尚蔵館」という小規模な博物館。
           絵を見たあと、せっかくだから庭を見ていこうと思って歩き始めた。ここは昭和天皇の武蔵野の林にしたいという希望でつくられたとは聞いていたが、東京のど真ん中にこれほどにきれいな林があるということにびっくりしてしまった。刈込みのような人工的な手入れをしたり園芸植物を植えたりはしない。しかし、人間の手は、目立たないように丁寧に加えられている。

           皇居には、これよりもずっと自然の森に近い吹上御苑の森がある。大都市の真ん中にこんな森があるのかという驚きは、東御苑にまさる。といっても、もちろん自分で見たわけではない。5年前に放送されたドキュメンタリーを、DVD「皇居・吹上御苑の四季」で見た。昨年ギンレイホールの支配人になった久保田さんと話をしていたら、話が倒木のことにおよび、かつてこの番組を製作したからと貸してくださったのだ。
           吹上御苑は皇居内の庭園だが、ある時期から人間の手をほとんど加えずに、自然の力のなすがままにされて出来上がった森だから、庭園というには、いささか逆説的である。

          カンゾウが咲いた

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            ヤブカンゾウ開花SClick to PopuP

            今朝、やっと3年目にして鉢植えのカンゾウが朱色の花をつけた。
            信濃追分の道ばたに、平面的に3〜4枚の芽を出している植物がお行儀よく同じ方向を向いていた。その様子が、ホックニーの描く植物のように平面的でポップな感じが可愛いかったので、そこにお住まいのかたに質問すると「カンゾウ」だとおっしゃる。 それを5株ほど頂いてうちに連れ帰り、鉢に植えておいたら大きくのびてゆく代わりに、あんなに魅力的だった若芽がのびて葉っぱは伸びていったが、花もつけないまま冬には姿を消した。

             カンゾウというのを、ぼくは漢方薬のパッケージを見ると原材料のひとつとして書かれている「甘草」のことだと思っていた。それは、佐渡の海岸沿いの丘を埋め尽くすカンゾウと同じものと思っていたのだが、ネットを調べてみるとカンゾウにはいろんな種類があるらしい。
             漢方薬に使われるのは「甘草」と書かれるマメ科の植物で、まったく別物のようだ。佐渡に咲くのはトビシマカンゾウ(飛島萓草)という種類でほかにもノカンゾウ(野萓草)というのがあって、うちで咲いたのはヤブカンゾウ藪萓草)。これらはいずれもユリ科カンゾウ属の植物なのだ。
            ほかのカンゾウはみな一重なのにヤブカンゾウだけが八重咲きだ。
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