小説「舟を編む」

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    舟を編む/三浦しをん/光文社
     

     昨年の10月にネットから図書館の貸出予約をしようとすると、すでに300人以上が待っているので、とりあえず本を予約しておいて先に映画を見た。
    その後、図書館が蔵書を5冊に増やしてくれたおかげで行列の進行がはやくなったものの、やっと先週に順番が来た。映画「舟を編む」が「日本アカデミー賞」の一等賞をたくさんもらった翌日だ。

     すでに映画を見ているのに、小説を読んでもすこぶる面白い。映画を先に見たから俳優の顔が浮かんでくるのだが、映画で小林薫と加藤剛が演じる二人の人物が、小説では両方とも橋爪功になってしまう・・・二人が会話することも多いのに、なぜなんだろう。
     

     小説をもとにしてつくられた映画は、もともと軸となる物語を背景であるかのようにしてラブストーリーに変えられてしまうことが多い。アメリカ映画ならベッドシーンを入れるのがサービスだと思いこんでいる。

     ところが、この小説では恋物語の比重が映画よりも大きい。逆に言えば、映画では恋物語の描写をシンプルにしている。「CLASSY」に連載されていたのだときいて、雑誌の読者に「辞典小説」を読ませるには、恋で味付けしなければならなかったのだろうと合点がいく。にもかかわらず、けっして辞典小説であることから逸脱していない。

     いや、これは言葉をテーマにした「ことば小説」なのだと考えれば、ことばによって組み立てられてゆく辞典づくりと、ことばの「意味するもの」と「意味されるもの」が微妙にすれ違ったりする恋を、ひとつのカテゴリーにくくることができるではないか


    帙と連句

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       先日、住宅のクライアントでもある友人の奥方が「わたしがつくったんです」と言いながら、テーブルに置いてお茶を入れに立った。

       ぼくは、趣味の域を超えるできばえに感心しつつ記憶の隅をさぐって「これは、『てつ』っていうんだっけ」と言いながら「和綴じ、包む」というキーワードをiPhoneにうちこむと「帙」という文字がでてきた。秩父の秩、秩序の秩と同じ字だなと思いながらよく見ると、偏は
      「ノ木偏」ではなくて「巾」で、しかも読み方は「てつ」ではなくて「ちつ」と読む。
       
       帙は、和綴じの本を数冊重ねてこの中に包み込む着脱式の表紙のようなものだ。これは、 和紙に文章をプリントしたものを二つ折りにして、表紙の紙を前後に重ねて糸で綴じるところから、表の帙に至るまで、恵子さんの手になるものなのだという。

       Wikipediaでは「和綴じ」という項目はないけれど、代わりに「和装本」という項目がある。和装というけれど、基本的な装丁のしかたは中国から来たものだろうに、Wikipediaでは「敦煌などの遺跡で発見されており、これらも中国由来であるとの説がある」と、日本由来に未練をもつ表記だが、つまらないナショナリズムだ。
       ところで、この和綴じの本の内容は、ご亭主の誓(せい) さんとお仲間ふたりによる連句集である。「ご興味があれば、玉井さんにひとつ進呈します」と言われたので、喜んでいただきますと答えた。それから ひとつきほど後の打ち合わせのときに頂戴した。

       
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