方尺の春

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     毎年3月3日に、ぼくは ばらちらしをつくる。

     つくると言っても、自分の手でつくるのは干し椎茸を甘辛く煮たり 海老や菜の花をゆでたり卵焼きを焼くことと、寿司酢をつくって飯に和えるくらいのものだ。

     

     あとはさまざまな魚介と野菜を買ってきて、出し汁や 酒と醤油とわさびにくぐらせて薄く味をつけ、寿司桶にひろげた酢飯の上に散らすだけのことだ。

    今年は娘が寿司飯をつくった。

     

     さして手をかける訳でないにもかかわらず、ぼくをすこぶる楽しい気分にしてくれるのは、春の野を切り取ってきて 木の筺の中に生けるように感じるからなのだ。

    そういえば、去年は 食べてから数日が過ぎて「方尺の春」だなと思ったのだが、今年も ひな祭りから数日たって、ぼくは去年の『方尺の春」という言葉を思い出した。


    ETV特集「長すぎた入院 精神医療・知られざる実態」

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       先週末の夜おそく、もう寝ようとしていたとき、自宅のハードディスクに「ETV特集・長すぎた入院」という番組が残されているのに気づいた。

       冒頭だけのつもりで見はじめたが やめられなくなって 1時間のドキュメンタリーを最後まで見てしまった。

      ぼくたちの国でまたひとつ、かくも理不尽なことが行われていることに対する腹立たしさが、 眠気をすっかり吹き飛ばした。

       

       冒頭から登場する主人公 「時男さん」は、39年間も精神病院に入院させられて 退院することができなかった。歩くことも話すことも考えることも、ひとの気持ちを推し量り思いやることもできるおだやかな人が、意志に反して病院から出してもらえなかった。

       

       しかし、そこは 福島第一原発の近くに5つあった精神病院のひとつだった。

       原発から5km圏内にあったために、患者たちは病院を出て避難することになった。転院先の病院で診察をうけたところ、時男さんのいた病院の患者40人のうち、2人を除き 他の患者は入院の必要がない、むしろ家庭に帰って生活する方がいいのだと医師が説明する。

       

       長いあいだ 願っていた退院が、思いがけない事故によって実現した。時男さんは、「オレの、これまでの39年をどうしてくれるんだ」と言ってかつて入院させられていた病院の医師の胸ぐらをつかんで殴り飛ばすくらいの権利はあるがそんなことはしない。

       彼は、ひとびとの責任を追及するよりも、40年ぶりに戻った自由を 胸に深く吸い込み、自動販売機で切符を買うことや、ATMをつかうこと カラオケで歌うことによって それを実感するのだが、それでも退院できなかった理由を探そうとする。


      水と油と神楽坂

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         先日、外出からもどってくると 机の上にコピーが1枚載っていた。

        神楽坂 清水流るゝ ■かな 紅葉」と、毛筆で一句書かれている。

         この字は なんて読むんだろうと、ギンレイホールの加藤さんが置いていらしたという。

         

         ぼくは こんな漢字を見たこともないし、そもそも この崩し文字を読み取ることがあやしい。

         MacBookの文字パレットを開いて「部首検索」で探すと、出てきたのは「膩」という漢字だった。

        音読みは「じ」訓読みは「あぶら」。

         

         神楽坂 清水流るる あぶらかな

         

         ということになるが、なぜ「あぶら」なのか?

        「『膩』という字らしいが、澄んだ水に油が浮いて虹が流れてゆくということでしょうか」と、加藤さんにショートメールを送った。 


        新年おめでとうございます

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          新年おめでとうございます

           

          今年もよろしくお願いします

           

           WEB年賀状は、文字通り元旦に送信してすぐに届くことが気に入っていたのですが、今年は、私事で ことのほか作業が遅れ、正月三日に送信することになりました。「一陽来復 六合遍く昭か」と、読むつもりです。

           シルエットの戌の右にいるのは申、一昨年の賀状につかった「くくり猿」です。

          申しあげるまでもなく犬猿の仲の者たちが他者を認め合って共生するほかに人類の未来はないとは、心あるひとびと だれもが思い願うことでしょう。

           

           年号を西暦でなく平成にしたのは、独裁と軍備につき進もうとしそうな われわれの行政府に対して、明仁天皇が 憲法の定める矩の中で できるかぎりの力をつくされた30年へのささやな感謝と敬愛のしるしです。

          30を「参拾」と書くと、「参」は戦地へのお参りを「拾」は ひとびとの思いを拾いあげることが目に浮かびます。

           


          「世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話」

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             世界の夢の本屋さんに聞いた素敵な話/ボブ・エクスタイン 著・イラスト/藤村奈緒美 訳/エクスナレッジ刊

             

             原書:FOOTNOTES* from the WORLD'S  GREATEST BOOKSTORES


             ふた月ほど前に 駒ヶ根の加嶋裕吾さんが、いい本を見つけたといって 書名をメールで教えてくださった。

             本屋についての本だから「かもめブックス」に置いてあるだろうと行ってみたが、在庫がないというので取り寄せを頼んだ。裕吾さんは、鑑識眼を信じている人のひとりだし、まして彼は もともと出版社の営業をしていた人だから、ぼくは実物を確認せずに注文した。

             

             2週間ほど経って、本の届いたことをしらせる電話がかかってきた。

            ここに登場する本屋は、主にアメリカの それもニューヨークが多い。魅力的な本屋と そこに来た客や店の店員にまつわるエピソードを、雑誌「ニューヨーカー」にイラストを描いているボブ・エクスタインが、イラストと文章を書いた おとなのための絵本だ。


            ドラマ「民衆の敵」と その味方たち

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               さきの選挙では、自民党が2/3議席を占めた落胆と、進んで投票できる政党ができたよろこびが交錯したが、その翌日10月23日に「民衆の敵」という連続テレビドラマが始まった。

               

               若松孝二の映画「キャタピラー」などを書いた脚本家の 意欲的なドラマらしいと娘が期待しているので録画予約しておいた。安倍政権に協賛しているフジテレビから放映されるということにも興味を惹かれた・・・NHKであれ読売であれ、上からの圧力に屈しない人がいるということなのか。

               録画を見てみると、おもしろい。

               

               このドラマと、それを活用して政治について知ろうと呼びかける女子学生たちを、先日の東京新聞夕刊が紹介していた。

               彼女たちは「#民衆のミカタ」というTwitterのハッシュタグをつくり、その日の番組の内容について 地方議会の若い現役女性議員にインタビューする動画を番組放映の前後にYouTubeで流している。

               内閣支持率が低いにも関わらず 与党が圧勝したのは、投票率が低いせいであることを考えれば、これは注目すべき活動だ。


              図書館で廃棄された「岩波講座 日本歴史」を持帰った・・どこかおかしくないか?

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                 行きつけの図書館の玄関に本棚が置いてある。そこには「ご自由にお持ち下さい」と書かれていて、毎月一度、廃棄される蔵書が置かれるから、その日に巡り会うといつも一応は目を通すのだが、10月1日は日曜日だが時間があまりなかった。そのときすでに出発時刻に遅れている「安倍政権強制終了デモ」の前に寄って、本を返そうとしていたからだ。

                 

                 この日の本棚には「岩波講座 日本歴史」全24巻のうちの15冊が並んでいた。12巻以降が欠けることなく揃っているから、江戸時代後半から戦後にいたる日本の大転換時代すべてがあるわけだ。

                 自分の不正の追及を避けようという 安倍晋三の個人的な動機で解散された衆議院の選挙が、結果如何によっては日本の歴史を悲惨な道に導くかもしれない この時期に、よりによって日本の歴史が捨てられることに出逢ったのも何かの縁だと思い、本の置き場はあとで考えることにして、とにかく すべて自転車の荷台にゴムの紐でくりつけて持ち帰った。


                いつも通る裏道に選挙事務所ができていた

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                   きのうの朝、自転車で事務所に向かう途中の裏通り、 開設にいそがしい選挙事務所の前を通り過ぎた。

                   候補者は、だいぶ前から民進党のポスターで蓮舫と並んだ写真で見た顔と名前だが、 整いすぎている顔のおかげで かえって人物の中身が心配になるような印象があった。

                   

                   西武新宿線 中井駅ちかくの つぶれた飲食店とおぼしき店舗が、ちぎれたテントの庇も残してそのままにして事務所にしている。ぼくは それが 気に入ったので 自転車を停めて振り返った。あとになってストリートビューで見た左の写真で手前の店なのだが、選挙事務所の現状とまったく変わらない。

                   

                   もと民進党だった候補者たちは、立憲民主党か「希望」か 無所属に分かれたから、所属によって人物が読み取れる。どの党なのか確かめようと選挙事務所まで戻った。

                  立看板には政党名がないが、ポスターには書かれている。立候補は決めていただろうが、政党がはっきりしないまま宙ぶらりんだったろう。

                   

                   ポスターに「立憲民主党」 と書かれていたのが ぼくはうれしくて 、忙しそうにしている事務所のドアに近づくと、若い女のひとがふたり出てきた。

                   


                  小池百合子の追悼文拒否 と 中川五郎の「1923年福田村の虐殺]

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                     きのうの朝刊各紙には、小池百合子東京都知事が、9月1日の関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文をおくることを断ったことが掲載された。犠牲者の数の根拠が薄弱だという主張にしたがったのだという。

                     

                     それを言うなら、碑文の「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」という表現の曖昧こそ問題にすべきだろう。これでは、災害で亡くなった人たちも含まれるようではないか。

                     デマに踊らされた日本人によってリンチで殺された朝鮮人を、地震で家屋の倒壊や火災で亡くなった朝鮮人と一緒にするような表現によって、リンチで殺された人たちの人数の不確かさと相殺したのだろうか。それはそれで、敢えて傷を露わにしないという大人の表現かもしれない。

                     

                     しかし、そうではなく、不確かなものは不確かなままに表現するとという意味で厳密に書くとすれば、碑文を「関東大震災朝鮮人虐殺被害者追悼碑」として、説明に「六千人余り」と書いたのを「数千人」と書き替えるのがいいだろう。

                     つまり、厳密な犠牲者の数は大きな問題ではない。たくさんの朝鮮人が、多くの場所で、デマに煽られた日本人の市民に殺される・・・という同時多発行動をひきおこすだけの精神的な土壌が、日本人にあったということが問題なのであって、ぼくたちは、たまたまその時代その場所にいなかったけれど、まったく無縁のできごとではないのだ。

                     

                     つい先日も、小池百合子と「市民ファーストの会」が衣の下の鎧を見せた。

                    知事選挙では「都民ファーストの会」を旗印に 勝ったが、夏の国政選挙では「日本ファーストの会」にすると言い出したのだ。「都民ファースト」というスローガンは利権に群がる連中のためでなく、ひとりひとりの都民を大切する行政を行うという意味であるとだと信じて投票した人が多いだろう。しかし、「日本ファースト」といえば、「USAファースト」と同じく国際協調でなく自国の利益を第一に考えるということだ。「都民ファースト」を国の全体に拡げるなら、「国民ファースト」であるはずだ。

                     

                     この記事を見て ぼくは中川五郎の「1923年福田村の虐殺」という歌を思出した。


                    IWJがおもしろい;郷原信郎・寺脇研・望月衣塑子

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                       先週、岩上安身が主宰する ニュース・ウェブサイト「IWJ」 に会員登録した。

                       いまさら 登録したのは、3人の人物のインタビュー映像を見たかったからだが、もうひとつ、岩上が ことあるごとに訴えるIWJの財政危機を、ささやかながら応援したいと思ったからでもある。月々1000円でも 数があつまれば力になるだろう。

                       

                       IWJの報道はインタビューを軸にしている。複数の人間による討論は、様々な方向から問題を見ることができ、しかも 一種の競技の場となって面白いし、不偏不党の建前もできる形式だ。だから、多くのテレビ番組は バラエティ番組になるというわけだ。

                      しかし、討論は内容でなく論争に勝つことに話が歪められることが多いし、ものごとを深く掘り下げて考えるには、インタビュアーとの一対一で、充分に時間をかけて 訊くべきことをききだしつつ 話し手の言いたいことを話させてゆくのがいい。

                       

                       インタビューを見たかった3人というのは 郷原信郎・寺脇研・望月衣塑子だ。

                      IWJのインタビューの多くは、冒頭の10分前後が 会員登録しなくても見ることができるのだが、それらを見て ぼくは 終わりまで見たくなった。寺脇研のインタビューなど 実に4時間を超えて、思いのたけを語りつくしてくれる。それを、26日からの3日間21時から、3回にわけて再公開する。


                      ・郷原は検察官出身の弁護士、 評論のほかに小説まで書いている。特捜による捜査権の濫用を批判し内部告発をしてきたことに 僕は興味を持って 信用できる人だと思ってきた。

                      ・寺脇研は もと文科省の官僚で、かつて「ゆとり教育」を先頭に立って進めたが、「反ゆとり」の攻撃によって居所を失い退職。文科省時代には4年後輩に前川喜平がいて、いまも親交がある。

                      ・望月衣塑子は,官房長官会見の獅子奮迅の追及で いまや知らぬもののない東京新聞の記者だが、以前にも アベノミクスの軸のひとつである武器輸出の問題に切り込んだ著書「武器輸出と日本企業」がある。

                       

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